塩竈のうみべの文庫が閉館して5年になりました。
文庫を主宰されていた長谷川ゆきさんが、亡くなられる直前に蔵書を塩竈市に寄贈されました。
私もその贈呈式には、足を運びました。ところが、その後、コロナ禍になり、なかなか再訪できないまま、5年もの歳月が流れていました。
その間、うみべの文庫の絵本たちのその後がずっと気になっていました。
うみべの文庫の絵本は、本当に活用していただけているのか?
長谷川さんが大切にしていたあの絵本とその想いはちゃんと受け継がれているのだろうか?
私は急に思い立ち、うみべの文庫のその後を見届ける旅に出ることにしました。
早速、蔵書のほとんどが寄贈された塩竈市の施設「コラソン」に電話でご連絡し、訪問のアポをとりました。
事前に所長の秋山さんとも少しだけお話ししましたが、毎日スタッフの方が絵本を読み聞かせされているそうで、絵本が活用されていることを伺いほっとしました。
そして、その時間に実際にうかがって、見学させていただくことにしたのです。
2023/6/27(火)の朝、私は仙石線で本塩竈駅に向かいました。
『うみべの文庫』(文研出版)の著者である堀米薫さんも、お忙しい中、時間をつくって同行してくださいました。
コラソンは小学生から中学生までの不登校の児童が通うことのできる施設です。
駅のすぐ近くという便利な場所にあり、明るいスタッフのみなさんと楽しそうにリラックスして過ごす子どもたちの姿がありました。
せっかくなので、急ではありましたが、絵本を一冊読ませていただき、堀米さんも、農業や牛の話などもしてくださって、子どもたちとの時間を一緒に過ごしました。
中学生の男子や小学校高学年の男子も素直に絵本の読み聞かせをきいてくれて、なんだか私のほうが元気をもらったように思います。
絵本は、活動されている部屋の中に置かれていて、いつでも読むことができるようになっていました。
きもちよく整頓された様子に、みなさんが大切にしてくださっているのがよくわかり、本当に嬉しくなりました。
文庫の絵本は、震災後、たくさんのみなさんの支援で集められたものがほとんです。
そのことを、長谷川さんはとても幸せだと思う一方で、プレッシャーにも感じていたのではないかと思います。
みなさんの支援や真心を無駄にしないために、重い病状の中、力を振り絞って、塩竈市に寄贈するという決断をされました。
そして、その想いは、確実に生きていました。
帰り際に、近所の市立図書館の中にある、うみべの文庫のコーナーにも足を運びました。
そこにも、しっかりと、うみべの文庫と長谷川さんのことが伝えられていました。
胸がいっぱいになった帰り道、長谷川さんがよくお土産にもたせてくださったお菓子「東太平洋」を買いに、梅花堂さんを訪れました。
レトロな雰囲気の素敵な店舗。東太平洋は私の娘たちが大好きなお菓子です。それも、長谷川さんが伝えてくれたものです。
東京の自宅への帰途、無意識に空をみあげて「長谷川さん、おげんきですか?」と話しかけていました。
「5年経っても、うみべの文庫はちゃんと、塩竈に残っていましたよ」
2023/6/28 くさかみなこ
うみべの文庫と長谷川ゆきさんについてはこちらの堀米薫さんの書かれた書籍『うみべの文庫』をご覧ください。
出版当時のブログもこちらにあります。
また、震災後、文庫をオープンされた当時の長谷川ゆきさんのインタビューも残っています。
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